集団オンライン授業の落とし穴

学校の休校に伴い、オンライン授業が始まっているところも多いと思います。とても喜ばしいことです。喜ばしいのですが・・・Twitterで小学2年生のお子さんを持つ、あるお母様の呟きを見つけてしまいました。

ざっと要約しますと以下の通り。

「先生の説明だけでさっと授業を始められる子はせいぜい5人くらい。思うに今までは、周りの子たちが何をしているのかを見て、それを真似してはじめる、という状況だったと推察。だからオンライン授業で手元だけ映されても何をしていいのかわからない子続出」

この話を聞くと、小児療育に関わる言語聴覚士は「あぁ」と納得するのです。

言い方は人によって様々ですが、私はこれを「場面の読み取り能力」と言っています。

上記のツィートを元に、授業のやり方と子どもの能力について分析してみます。

*先生が「口頭」で授業の指示を出す。
 例:教科書の32ページを開いて、まずは問題2の計算をノートに写してください。それから計算問題を問いてください。計算式を書くために、3行あけて写しましょう。

【子どもに必要な能力】
●聴覚的理解(耳で聞いた指示を理解する)
●聴覚的把持(耳で聞いた指示をおぼえておく)
●行動(指示の通り行動する)
●処理(算数の計算問題をとく)
●注意力(聞き漏らさない、集中する)

もっと細かく分析もできるのですが、少々割愛しています。

いかがですか? 授業の指示だけとっても、様々な能力が必要ですよね。

そして、これらの能力がすべて備わっている子どもは、上記のツィートをされているお母様のお子さんのクラスでは、たった5人だけ、ということなんだと思います。
ほかのお子さんはどうなのか。おそらくツィートのお子さんは普通クラスだと推察します。大きな遅れはない子どもたちが仮に20人揃っているクラスで、残りの15人は上記のような指示だけでは授業にならない・授業が始められない、ということになります。

なぜなのか。

それは残りの15人の、●聴覚的理解(耳で聞いた指示を理解する)●聴覚的把持(耳で聞いた指示をおぼえておく)●注意力(聞き漏らさない、集中する)の能力に少々問題があるからと考えられます。おそらく15人の子どもは行動や処理には問題がないか、それほど目立たないはずです。でも「耳で聞く」2つの能力か、注意力のどれかひとつでも弱ければ、たちまち行動や処理にも支障をきたします。「耳で聞いたこと」が理解できなければ行動に移せませんし、「耳で聞いたことをすべて憶えておくこと」ができなければ、行動や処理は途中で止まってしまいます。さらに注意力が途切れてしまえば、その後の行動や処理も行えません。

「でも、普段の授業では普通通りやれていた」

それはなぜなのか。

そこで出てくるのが「場面の読み取り」の能力です。

聞いたことをとっさに理解できなくても、すべてを憶えていられなくても、周りの状況を見て、何をやらなければならないのか察知できれば、遅れないように行動や処理ができるのです。

普段の授業では、ちょっと周りを見渡せば、誰が何をしているのか見えます。だから自分もその通りに行動することで、遅れることなくやれていました。ところがオンライン授業で、カメラが手元だけしか映さなくなれば、参考にできる人がいないことになります。だからこそ「何をやっていいのかわからない子続出」で、授業にならないのです。

上記のツィート元のお子さんのクラスは、おそらく普通クラスです。普通クラスであっても、小学校2年生くらいであれば、半分以上の子どもが、口頭指示だけでは行動ができないのです。もちろん年齢があがれば「耳で聞く」能力もあがっていくことでしょう。ですが、今の遅れが癖づいてしまうと、勉強自体を嫌になってしまう可能性もあります。

聴覚的理解と聴覚的把持、そしてそれを補う場面の読み取り能力。これらは学校の授業では教えてもらえません。私たち専門家の仕事のひとつだと思っています。

だからこそ、大きな遅れはないお子さんでも、私たち言語聴覚士はしっかり評価をして、指導につなげています。